ラフマニノフ 「パガニーニの主題による狂詩曲」 Op.43
ラフマニノフは1934年、パガニーニ作曲の「24の奇想曲 Op.1」の終曲の主題にもとづいてピアノとオーケストラのための変奏曲を作曲した。これが「パガニーニの主題による狂詩曲 Op.43」、通称「パガニーニ・ラプソディー」である。24の変奏からなる作品で、特に第18変奏アンダンテ・カンタービレはラフマニノフならではの叙情的な旋律で有名である。クラシックに詳しくない人には協奏曲よりもむしろ、この曲や「ヴォカリーズ」の方がなじみ深いかも知れない。なお、リストやブラームス、ルトスワフスキなども同じ主題による変奏曲を書いている。
短い序奏に始まり、先に第1変奏が奏され、その後に主題が提示されるという少し変わった 順序になっている。第7変奏では新たにディエス・イレの旋律が導入され、以後度々登場する。
ディエス・イレ(「怒りの日」と訳される)とは教会音楽の旋律で、階名でいうと「ド・シ・ド・ラ・シ・ソ・ラ・ラ」になる。クラシックでは以前から死や最後の審判を象徴するモティーフとしてよく使われてきたものである。ベルリオーズの幻想交響曲の終楽章や、リストやサン=サーンスの「死の舞踊」などが有名な例。ラフマニノフもこの旋律を頻繁に使用してきた作曲家であり、この曲でもそれが効果的に活かされている。
ピアノとオーケストラのための協奏的作品として4曲の協奏曲とともに広く親しまれる、ラフマニノフの傑作である。亡命後の国外生活の中で作られた作品としては最も人気のある曲といえるかも知れない。
ニコロ・パガニーニについて
ニコロ・パガニーニ(1782-1840)はイタリア出身のヴァイオリニスト。驚異的なテクニックを誇るヴァイオリン演奏史上最大のヴィルトゥオーゾであり、多彩な技巧を盛り込んだヴァイオリン作品も残している。そのあまりにも卓越した技巧と特異な風貌から、「その技巧を悪魔に魂を売って手に入れた」と怖れられたという。彼の超越的な技巧にはマルファン症候群という先天性疾患も影響していたらしい。フランツ・リストが彼の演奏を聴いて「自分はピアノのパガニーニになる」と決意したことはよく知られている。また彼はイングヴェイ・マルムスティーンなど現代のギタリストに影響を与えたことでも知られるが、実際にギターのための作品も残している。これはフィレンツェの女性ギター奏者を愛人にしていたためという。
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