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「くちびるNetwork」

作詞:Seiko 作曲:坂本龍一 編曲:かしぶち哲郎

このところ私の近辺で岡田有希子さんについて語った文章をよく見かけるのだが、今日は彼女の24回目の命日(佳桜忌というらしい)に当たる。80年代のアイドルはこのサイトの主要テーマの一つとなっていることでもあり、ここで彼女のことについて少しふれておくことにしたい。

岡田有希子さんは1984年にデビューしたアイドル歌手で、本田美奈子さんや南野陽子さんはデビューは一年遅かったが、堀越学園では同級生になる。実をいうと私は当時岡田有希子さんのことはちょっと好きだったのだ。翌1985年に本田美奈子さんがデビューするとそのあまりのかわいさに魅せられてそちらに乗り換えてしまったのだが、私にとって美奈子さんがジュリエットだとするなら、岡田有希子さんはちょうどロザラインのような存在だった。


くちびるNetwork」は生前に発売された最後のシングルである。彼女のヒット曲はほかにもいくつかあるが、この曲が最も強く印象に残っているのはなぜだろう。タイトルは何だか意味がよくわからないし、サビのところではこの“Network”という言葉と音符の数が合わず不自然な譜割りになっていて、聴きにくいことこの上ない。

この曲は事務所の先輩である松田聖子さんの作詞と坂本龍一さんの作曲という大物コンビによる作品ということで当時話題を呼んだようなのだが、私にとってはそうしたことはあまり本質的ではない。そういうこととは別に、この曲は何というか、今でも耳にすると否応もなくあの頃に引きずり戻されてしまうような、そんな魔力を持っているのだ。


彼女が亡くなった時にはとても驚いたものだが、同時に「そういわれてみるといつかはそんなことが起こりそうな気はしていたな」という不思議な感慨にとらわれたのを覚えている。あの感覚は一体何だったのか、今もわからずにいる。確かに彼女にはいつもどこか儚げな存在感があったのだが。

あれ以来私は彼女のことをまともに考えたこともなかったし、なぜ死ななければならなかったのかについても何も知らない。だから彼女についてろくなことを語れるわけでもないのだが、せめて彼女の魂の安らかならんことを願ってこんな駄文を書き連ねている。


ところで、私には意外なことなのだが、生前の彼女を知らない世代からも新たにファンになる人が多くいるのだという。歌手として大成したわけでもない、自分が生まれた時にはすでに亡くなっていたアイドルのファンになるという心理は私には理解しにくいのだが、ともかく今も彼女が多くの人に慕われているというのはうれしいことである。

しかし私にとってさらに意外で理解し難いことに、一部には彼女のことを尾崎豊と重ね合わせて崇拝する向きもあるのだそうだ。これにはさすがに違和感を覚えざるを得ない。当時尾崎は本物のカリスマだったが、彼女はごく普通の人気アイドルであって、それ以上でも以下でもなかった。彼女の実像から懸け離れたイメージを勝手に膨らませて、それを崇め奉るというのでは意味がないのではなかろうか。彼女と同時代を生き、その無垢な笑顔に淡い思慕を寄せていた者としては、彼女のありのままの、等身大の女の子としての姿をこそ愛して上げて欲しいと思う。

記 2010.04.08

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