「SLOW WALK」
作詞:MINAKO 作曲:樫原伸彦 編曲:樫原伸彦
アルバム「豹的 (TARGET)」(1989.07.05)に収録。
本田美奈子さんは自身が歌う曲の歌詞をいくつも手がけているが、最初に自作の歌詞を発表したのはロックバンド Minako with Wild Cats として活動していた時期のアルバム「豹的 (TARGET)」が最初である。このWild Cats としては二枚目のアルバムで、美奈子さんは三曲の歌詞を手がけている(「朝まで」は秋元康さんとの共作、「愛が聞こえる」は先行シングルとしてアルバムに先立って発表されていた)。このうちの一曲が「SLOW WALK」である。
ロックバンドとしての楽曲ながらバラード風の曲調で、せかせかと急ぎ足で道を通り過ぎることを戒めて「心で道を歩いて」と語りかける作品である。私はこの曲のことを美奈子さんが亡くなってから知ったが、最初に作詞に挑んだ作品の一つがこのような歌だったということに深く感銘を受けたものだった。
1989年といえばスローフードとかスローライフといった理念が日本で知られるようになるよりも何年も前のことである。過労死が社会問題として顕在化しつつあるまさにそのただ中で、「24時間戦えますか」という宣伝文句とともに空虚な華やかさが踊り狂ったあの忌まわしい時代…。そんな時代風潮に逆らうかのようにこうした楽曲を制作していたということに、美奈子さんの類い稀なる鋭敏な感受性を見る思いがする。
バラードということもありバンドサウンドはやや希薄な楽曲なので、ソロに戻ってからでも歌っておかしくなかったように思うのだが、詳しくは知らないが歌われる機会はあまり多くなかったようなのが惜しまれる。これからも折に触れ聴いていきたい美奈子さんの楽曲の一つである。この曲を聴きながら、美奈子さんのいうように心で道を歩くよう心がけたいと思う。
記 2011.05.06
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