LIVE FOR LIFE in SHIBUYA 感想

本田美奈子.追悼展

昼過ぎに東急デパート渋谷本店に着くと7階の特設会場へ。朝霞の時は人が一杯であまりゆっくり見ることもできないくらいだったのだけど、意外に閑散としていて少し拍子抜けしてしまった。でもそのお蔭でゆっくり気の済むまで展示を見ていることができた。


朝霞の時に比べて充実していたのは写真パネルだったろうか。特にCDジャケット等ですでになじみ深い旭川の雪の美術館でのセッションは数も多く、美奈子さんの美しさの際立つものばかりだった。できることならこれだけで一冊写真集を作ってもらえないだろうか。本当に貴重なショットの数々だった。

衣装も朝霞の時にはなかったものがあった。『誰でもピカソ』に出演した時のピンクのものとブルーのもの。そして特筆すべきなのは20周年のために準備された一際豪華な衣装の脇に、それを着ている美奈子さんの写真が添えられていたこと。コンサートなど公の場で披露する機会はついになかったのでこれを着せて上げたかったとは誰しも思うところ。サイズの確認などのために試着したことくらいは当然あるだろうと思っていたけど、写真まで残っていたとはうれしい驚きだった。髪をアップにしたヘアスタイルでにこやかに微笑む美奈子さんは正に幸せそのものといった表情だった。一体誰がこの後間もなくこの世を去ってしまうなどと思い至っただろうか。

様々な展示品の中で音楽的に最も興味深いのがアルバム「JUNCTION」の制作準備期間に作成された30巻の「MINAKOエトセトラテープ」。美奈子さんが自分の音楽の方向性を探る上で参考にしたと思われる洋楽の音源がテープに納められている。脇から少しだけ収録された内容が確認できるのだが、サラ・ブライトマンダイアナ・ロスヴァネッサ・ウィリアムズジュリア・フォーダムビョークセリーヌ・ディオントリーネ・レインエルザといった歌手達の名前があった。個人的には特にエルザの名前を見つけた時が一番うれしかった。


会場の外には関連グッズの販売コーナーがあり、その脇には美奈子さんへのメッセージを貼り付けるためのボードがあった。これまでにも例えば東宝のサイトなどで美奈子さんへのメッセージを贈ることができたのだけど、何をいえばいいのかわからなくて書き込みなどはしないできた。今回はせっかく来たのだから何か残しておきたいと思い、やっと思いついた言葉は「いつまでもあなたを愛しています」という陳腐なものだった。いざ貼り付けてからほかのみなさんのカードをちらっと見てみると結構細かい文字で丁寧に書かれたものが多くて、太目のフェルトペンでぶっきらぼうに書かれた私のメッセージはちょっと周りの雰囲気から浮いていたかも知れない。


フィルムコンサート “舞輝” Tour 2006-2007

続いて原宿に移動してフィルムコンサートを鑑賞した.会場に着くと前売券を持っている人は優先して並ばせてもらえて、全体の3番目に入ることができた。平らなスペースに椅子を並べただけの客席だったので後ろの席が高くなっていないのを見て前の方がいいと判断し、前から3列目の席を確保。幸いすぐ前の席には人が来なくて、ストレスなく見ることができた。


朝霞の時は最初に地元で行われた凱旋コンサートの模様が紹介されたが、今回はそれがなくて代わりに出演したTVCMが放映された。カルビーのポテトチップスなど懐かしいもの、私は見たことがなかったものなどいろいろとあって楽しかった。特に砂浜を駆け寄って来ると思いきや通り過ぎていってしまうポテトチップスのCMは思い入れのあるもので久しぶりに見てうれしかった。またそれよりも古いポテトチップスのCMでバックに流れている歌の最後の部分の歌詞が当時何度聞いてもわからなかったのだけど、今回改めて聞いてみて「It's a crispy, crispy world.」であるのが確認できた。TVに付属のスピーカーの解像度ではどうしても“crispy”と聞こえなかったのだ。長年の疑問が解消できたのは思わぬ収穫だった。

その他のCMで印象深かったのはやはり「つばさ」をフィーチャーしたオッペン化粧品のもの。私には見覚えのないものだった。当時もしこれを見ていたら美奈子さんを再認識するのがもう少し早くなっていたのではないかと思うと悔やまれてならない。映像は化粧品のCMに相応しく、美奈子さんの美しさに満ち溢れたものだった。


肝腎の歌の映像&音声に関しては朝霞の時とほぼ同じだが、Wild Cats時代の「勝手にさせて」と「愛が聞こえる」が新たに加えられていた。あの時は歌声に圧倒されてしまって冷静に見ていられなかったのだけど、今度は少し落ち着いてじっくり鑑賞できた。

前回はただただ素晴らしいとしかいえなかった阿蘇山麓の野外コンサートで歌った「つばさ」は改めて聴いて何が素晴らしかったのかが少しわかってきた。特に印象的だったのがファルセットを自在に使っていたことだった。このコンサートがいつ行われたのか正確に知らないのだが、一緒に「Shining eyes」を歌ったそうなのでMarvelousへの移籍後なのは間違いない。美奈子さんはMercury在籍時のアルバム「晴れ ときどきくもり」の頃からファルセットを自身の表現に効果的に採り入れる手応えをつかんだのではないかと思う。この時の「つばさ」でも随所で美しいファルセットを聴かせてくれていた。

もう一つ特徴的だったのは歌い回しが非常に即興的に自由に歌っていたこと。特に音符を長く伸ばすところと短く切り上げるところの対照が曲にメリハリを与えていた。緑濃い屋外で晴れ渡る青空の下、吹き抜ける風を受けて美奈子さんがのりにのって歌っているのがわかり、聴いているこちらの心にも爽やかな風がそよぐのを感じることができた。ロングトーンの伸びなどはスタジオ録音の音源ほどではないかも知れないが、美奈子さんの歌う喜びをじかに感じられる素晴らしい名演だったと思う。


BOSSさんの娘さん河村和奈さんによるナレーションは改めて素晴らしいと思った。特に「ありがとう」の詩の朗読は自然でありながらなおかつ感情が込められていて感動を誘うものだった。美奈子さんも自分の言葉をあのように大切に読み上げてもらってさぞかしうれしかったのではないだろうか。

最後はスタジオ録音の「新世界」をバックに数々の秘蔵映像が流された。終わってから拍手をしたかったのだけど、静かなエンディングだったので何となくタイミングを逸してしまった。それだけが少し心残りだった。

「“舞輝” Tour 2006-2007」と銘打っているからにはこれから来年にかけてあちこちで開催されるのだろう。ぜひ全国の人にこの素晴らしいパフォーマンスを体験していただきたいと思う。

記 2006.08.14
改訂 2006.08.26
改訂 2006.11.23

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