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「アメイジング・グレイス」再び

日本語詞:岩谷時子 作詞:ジョン・ニュートン 作曲:不詳 編曲:井上鑑
アルバム「AVE MARIA」COCQ-83633(2003.05.21)所収。ミニアルバム「アメイジング・グレイス」にはスタジオ録音の音源とともにライヴ映像が収録されている。ベスト・アルバム「クラシカル・ベスト〜天に響く歌〜」COZQ-255,6(2007.04.20)にもスタジオ録音の音源が収録されているほか、入院中に病室でボイスレコーダーに録音した音源が配信限定でリリース(2008.03.24)されている。ヘイリーさんとのデュエット・ヴァージョンはシングル「アメイジング・グレイス2008」(2008.05.21)、アルバム「純~21歳の出会い」(2008.06.04)に収録されている。

今やすっかり本田美奈子さんの代名詞のようになっている感のある「アメイジング・グレイス」だが、この歌をめぐって先月とてもうれしい出来事があった。ヘイリーさんが美奈子さんの遺された音源と仮想的な“デュエット”をしてくれたのだ。

ヘイリーさんは日本では彼女の歌う「アメイジング・グレイス」がTVドラマの主題歌に採用されたことがきっかけで広くその名を知られるようになった人で、この歌とは美奈子さんと同様に浅からぬ縁がある。この二人の共演がこんな形で実現するとはちょっと出来過ぎているのではないか、と思うくらい感慨深い出来事である。


最初にこの話を聞いた時にはどんなアレンジになっているのだろう、と興味があったが、実際聴いてみると交互にソロで歌い合った後、最後にワンコーラス美奈子さんの歌う主旋律にヘイリーさんがコーラスをつけるというシンプルなものだった。もう少し凝ったものを想像していたのでやや意外だったが、あまり装飾的なアレンジはこの歌には似つかわしくないのかも知れない。

この二人はどちらも甲乙つけ難い美声の持ち主だが、こうして同じ歌の中で聴き比べてみるとやはり両者の個性の違いも感じとれるような気がする。ヘイリーさんの歌がピュアな魂がそのまま表れているかのような真っ直ぐな美しさだとすれば、美奈子さんの方は旋律線の描き方が柔かいというか、幾分かの陰影を包み込んだ崇高さといえばいいのか…。とにかくとても贅沢な共演である。最後のワンコーラス、二人の音高が波打ちながら交錯する様は両者のこの歌との結び付きの強さが拮抗する様子を描いているかのようでもある。


今月3日にはヘイリーさんがNHKの『歌謡コンサート』に出演し、美奈子さんとのデュエットを披露してくれた。この放送を通じて多くの方が二人の歌心にふれて下さったことと思う。この番組には「虹と雪のバラード」でトワ・エ・モワのお二人も出演していた。白鳥英美子さんの歌う「アメイジング・グレイス」も日本ではひろく親しまれてきた。日本でのこの歌の受容に決定的な貢献をした三人の歌手がこうして一堂に会した様は感慨深いものがあった。


ヘイリーさんと美奈子さんはおそらくファン層の重なる部分も多く、ヘイリーさんにとって美奈子さんはある意味で“ライバル”というべき存在でもあるのではないかと思う。この共演がどのような経緯で実現に至ったのかはよくわからないが、こうしてヘイリーさんが深い共感を以て美奈子さんと一緒に歌ってくれていることに心から感謝したい。きっと歌声そのままに心の優しい人なのだと思う。ぜひその素晴らしい才能を大きく花開かせて、美奈子さんの分まで精一杯歌っていって欲しい。そしてできることならこの共演、海外のヘイリーさんのファンの方たちにも聴いていただく機会があれば、と願わずにはいられない。

記 2008.06.06

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