ラフマニノフ 「前奏曲 嬰ハ短調」 Op.3-2
ラフマニノフは1892年、19才の時に5曲からなるピアノ小曲集「幻想的小品集」Op.3を作曲した。この内の第2曲「前奏曲 嬰ハ短調」はたちまちのうちに評判を呼び、彼の名は世界中に広まることとなった。重厚な和音の連打が特徴的なこの曲はロシア正教の教会の鐘の音に着想を得たといわれ、「鐘」のニックネームでも親しまれている。こうした鐘の音を思わせるぶ厚い和音は彼の作品の多くに共通して見られる特徴である。なお、この曲とは別に合唱交響曲「鐘」という作品(こち らはニックネームではなく正式なタイトル)もあるが、これと混同しないように。
この曲があまりにも有名になったため、彼はこの後コンサートの度にアンコールでこの曲を演奏することを要求され、弾き終わるまでは決して帰してもらえなかったそうである。またこの曲は世界中で多くの音楽家により(時にはアレンジされて)数え切れないほど演奏されたのだが、当時ロシアは著作権についての国際条約に加盟していなかったため、彼には何ら金銭的利益をもたらさなかったという。彼がこの曲から手にしたのは出版社に売り渡した時に受け取った200ルーブリ(一曲当りにすると40ルーブリ)に過ぎなかった。
その後彼は1903年に「10の前奏曲 Op.23」、1910年に「13の前奏曲 Op.32」を出版し、嬰ハ短調のものと合わせて24の調性に対して一曲ずつの前奏曲を作ることとなった。これはおそらくショパンの「24の前奏曲 Op.28」に倣ったもので、モスクワ音楽院の同窓、スクリャービンの「24の前奏曲 Op.11」(1888-96)にも刺激を受けたものと思われる。これら24曲は現代のピアノのレパートリーの重要な部分を占めているといっていいだろう。
記 2006.02.10
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